東京高等裁判所 昭和33年(ム)10号 判決
一、再審原告が再審被告を相手取つて提起した当庁昭和三十一年(行ナ)第三三号審決取消請求訴訟について、昭和三十三年八月二十八日に、再審原告敗訴の判決が言い渡され、再審原告主張通りの経過で該判決が確定したことについては、再審被告の明らかに争わないところである。
二、再審原告は、右確定判決には民事訴訟法第四百二十条第一項第九号所定の再審の事由があると主張して、本件再審の訴提起に及んだものであるが、同条項第九号の規定は、確定判決に「判決ニ影響ヲ及ホスヘキ重要ナル事項ニ付判断ヲ遺脱シタルトキ」において、再審の訴をもつて不服を申し立てることができる、とするものであつて、通常かゝる事由は、判決正本が当事者に送達されたときに、これを一読して直ちに知り得べきものであると考えるのが、当然である。再審原告は、本件再審の訴において、判決確定の後の日附を挙げて、これらの日に本件再審の事由たる判断遺脱の各事実を知つた、と主張するが、何故に再審原告が判決正本の送達を受けた直後にこれらの事実を知り得ずして、その主張のそれぞれの日に初めてこれを知つたかの理由については、そのことを納得させるに足る何らの説明を与えていない。再審原告は、或いは判決正本送達の当時その内容を深く検討しないで、後日調査研究の結果該判決に判断の遺脱のあることを発見することができた、と主張するのであるかも知れないが、再審の訴の出訴期間に関する民事訴訟法第四百二十四条、或いは後に説示する同法第四百二十条第一項但書の適用上、再審事由たる事実を知つた日の決定をさような当事者の恣意によつて左右することのできる事実にかゝらしめることは、これら各法条の設けられた趣旨にかんがみ、相当でないといわなくてはならない。
三、ところで、民事訴訟法第四百二十条第一項但書によれば、当事者が再審事由を知りながら上訴によりこれを主張しなかつたときは、該再審事由に基いて再審の訴を提起することができないことが明らかであつて、こゝに上訴によりこれを主張しなかつた、ということの中には、現実に上訴を提起したにかゝわらず、該上訴においてこれを主張しなかつた場合のほかに、上訴によつてこれを主張することができたであろうのに、ついに上訴の提起を怠つた場合をも含むと考うべきであるのは、当然である。しかるに本件において、再審原告は、判決正本送達と同時にその主張の各再審事由を知つたと解すべきこと、前に認定したとおりであるにかゝわらず、上訴の手段によつて不服を申し立てなかつたことは、弁論の全趣旨に徴して明らかなところであるから、再審原告がこれらの同じ事由をもつて再審の訴を申し立てることは、前記の規定によつて許されないものといわなくてはならない。本件再審の訴は、この理由によつて、とうてい却下を免れないものである。